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仁尾酢の横の細い路地を曲がり、大井温泉の近くに見えてくるのが、昔ながらの店構えをしている「伊藤製パン所」。昭和23年創業の伊藤製パン所に結婚を機に嫁ぎ、13年前からご自身でパンを作り続けている伊藤千鶴子さん。誰とでも忖度なしに接する気さくな方だ。
まさか私がパンを焼くとは思っていませんでした。
伊藤製パン所は昭和23年に創業したパン屋で、現在は”月曜・木曜が菓子パン、火曜があんぱん、金曜が食パン、水曜・土曜が揚げパン”を作っています。私は元は農家の娘だったのですが、結婚を機にパン屋に嫁ぎ、主人が亡くなる13年前まではパン屋のお手伝いをしていました。
”家業”だからではなく、これからは自分の生き方としてパンを焼く。
私がパンを初めて焼いたのが主人が亡くなってからです。主人が亡くなりいよいよお店を閉めようと思っていた時に、「あんたが食べる分だけでも焼いてみ」と家の前に住んでいる6つ下の友人から言われたのがきっかけでした。パンは日によって具合が違うため感覚が必要な部分があります。長年パン作りの感覚を体で覚えていたこともあり、初めて焼いたパンを友人や近所の方に食べてもらった時には「あんたの方が美味しいんちゃう?!」と言って貰えたんです。これからは自分の生き方としてパンを焼こうと決意しました。
「人生、七転び八起き」。ようやく今が一番楽しいかもしれない。
現在81歳なのですが、人生色々ありました(笑)。子供の頃は実家の農家のお手伝いをずっとしたり、中学1年生の頃に親に内緒でラジオのクイズ番組に出演しに行ったり、パン屋に嫁いでからは嫁としての試練の連続だったり。でも人生のターニングポイントで助言をしてくれる友人にも出会うこともできました。何度もパンを見たくない日もありましたが、どん底でも続けると徐々に自分の中で怖いものがなくなっていくんですよね。人生もうダメだと思ってもこの歳まで生きてたら、楽しいと思える日が来るんやなと実感します。
編集後記
まちの色んな方から「イトパンのおばちゃん」と癒し系の存在として愛されている伊藤千鶴子さん。「あんたらの人生のどん底は風邪。」と言えてしまうほど、山あり谷ありの人生を送ってこられた方なのだと強く感じた。ほんわか癒し系な面と、人生の先輩としてどっしり強い面を兼ね備えている。千鶴子さんがお店に居て、今日もパンがあることがこのまちの空気の一部を作っているのかもしれない。
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